◆◇◆血の人形事件について(1987年の悲劇)◆◇◆

【1】オカルトサークルの儀式

《出来事》

発端となる出来事が起こったのは、1987年4月20日未明。

平塚市のとある山中。
そこには、6人の男女が集まっていた。
彼らは同じオカルトサークルに所属するメンバーで、18~21歳と皆若かった。
山中で何が行われていたか、その詳細については不明点が多い。
一説によれば、彼らは自らの身体にナイフを刺し、流れる血を人形に注いでいたという……。
 
《管理人イマオカによる考察》
深夜の山中で、果たして彼らは何をしていたのか。
様々な仮説が立てられたが、当初は次の説が有力と考えられていた。

・ドラッグ(あるいはそれに類するもの)の取引説

彼らは、大学の構内でドラッグを売りさばくため、その取引を山中で行なっていたという説だ。
血の人形の儀式は、捜査をかく乱し犯罪自体を隠ぺいするための偽装と考えられた。

しかし、この説はあまりにも説得力に欠ける。
当時、大学構内でドラッグの売買が行われていたという事実を示す証拠は一つもない。
何より、ここにいた6人全員から、薬物を使用した痕跡が一切見つかっていないのだ。
よって、この仮説は、単なる当てずっぽうな推論と考えた方が自然である。

管理人イマオカは、以下に挙げる説が一番有力と考えている。

・降霊術説

彼らは、そもそもオカルトサークルのメンバーである。
なんらかのオカルト的な儀式をしていたと考えた方が、理解がしやすい。
また、彼らは儀式の前、降霊術の本を買い集めていたという証言もある。
人形に血を注ぐという異常行為も、降霊の儀式の一環と考えれば、意味深な説得力を持ち始める。
(追記:参考として、以前私が執筆した記事をページ最下部に添付した。)

だが、どちらがより真相に近いのか、それは今も不明なままである。
事実を知るものは皆、命を絶ってしまったのだから。

【2】奇妙な自殺者たち

《出来事》

山から降りてきた若者たちは、その時点で全員正気を失っていた。
視点は定まらず、口にする言葉も意味不明だった。
若者たちは皆血まみれで、まともに歩くことすらできなかった。
近所の住民に発見され、すぐにパトカーと救急車で市内の病院へと搬送された。

そしてしばらく経った、1987年5月7日。
メンバーの一人だった葉山伸次郎(当時19)が、自宅のマンション12階の階段の踊り場から飛び降り、死亡した。

多数の目撃者がいたため、自殺であることは明らかだった。
彼の死体のポケットから、奇妙な紙片が見つかった。
そこには、こう記されていた。
『崇拝するシラノの元へ、我が胴体を捧げる』
警察の捜査では、精神失調状態にあった若者の自殺であり、事件性はないと判断された。
しかし、それから13日後の5月20日、事件は再び起こってしまう。
葉山伸次郎と同じオカルトサークルのメンバーだった杉崎洋子(当時21)が、自宅のガレージ内にて首吊り死体で見つかったのだ。

彼女のポケットからも、奇妙な紙片が見つかった。
『崇拝するシラノの元へ、我が右腕を捧げる』
その後も13日周期で、オカルトメンバーの自殺は続いた。

6月2日には星野光(当時20)が、自宅の風呂場で手首を切った状態で発見された。
ポケットからは、また奇妙な紙が見つかっている。
『崇拝するシラノの元へ、我が左腕を捧げる』
 異常事態に様々な憶測が飛び交う中、6月15日に柳田淳史(当時18)が電車に飛び込んで自殺した。
ポケットには紙片が入っており、彼も次元の犠牲者であることは明らかだった。
『崇拝するシラノの元へ、我が左脚を捧げる』
この頃になると、この連続自殺事件をマスコミも大々的に取り上げるようになった。
様々な憶測が飛び交い、まだ犠牲者が出るのかと注目が集まる中、また1人の若者が命を絶つ。
6月28日、北澤ほのか(当時20)の死体が密閉された室内で見つかった。
司法解剖の結果、彼女はガス中毒による自殺と判明。
何らの事件性も見られなかったが、ほかの自殺者と同じくポケットには紙片が入っていた。
『崇拝するシラノの元へ、我が右脚を捧げる』
そして、7月11日、6人目の犠牲者が発見される。
白木豪雪(当時21)が、自室でヒ素を飲み下し自殺した。
彼のポケットに入っていた紙の文章は、次のものであった。
『崇拝するシラノの元へ、我が頭を捧げる』
この白木豪雪が、この事件の最後の犠牲者となった。
これ以降、この事件に関わると考えられる死者は発生していない。

《管理人イマオカによる考察》
当時はまだネットが発達していない時代だったが、それでもこの事件は、あまりの不可解さから様々な憶測を呼んだ。
以下、当時唱えられていた説をいくつか挙げていく。

・集団ヒステリー説

ある心理学者は、この事件をある種の集団ヒステリーが起こしたものだと提言した。
ファティマの奇跡を引用するまでもなく、大人数が同時に幻覚を見た事例は世界中で枚挙にいとまがない。
だが、それが集団自殺にまで展開した事例は存在せず、この説は説得力に欠ける。

・麻薬シンジケートによる暗殺説

あるジャーナリストが発表した説である。
大学内で麻薬を売りさばいていたメンバーが、麻薬シンジケートによって何らかの報復をされたという説だ。
しかし、そうだとすると謎の紙片はなんなのだろうか。妥当性のある理由を見出すことができない。

・降霊術によって引き起こされた呪い説

管理人は、この説を最有力視していた。
彼らはなんらかの存在を降霊し、その代償として精神に異常を来たし、自ら命を絶った、あるいは、絶たざるを得なかったという説だ。

この説はマスコミでも頻りに取り上げられ、いつしか本事件は『血の人形事件』と呼ばれるに至った。
多くの謎を残しながら終息したこのミステリアスな事件は、今なお多くの人々の記憶に残っている。

【補足】管理人イマオカによる『血の人形事件』の取材記事
悪霊と怪死事件